インドの国内旅行でジャイプールに行った時、どこかのお土産屋さんでこの本を発見。
『聖牛 そして様々なインド物語』 タルンチョープラ 著
日本語に翻訳されていたので興味本位で購入。そして読んでビックリ。話題の選定が非常におもしろい。
冒頭はインドではお馴染み牛についての記述されており、いきなりのタイトル回収である。その次はインド流お見合い結婚の流れ、観光地の歴史解説、ヒンドゥー教、カースト制度、ビジュラ(女装した男たち)やボリウッドについてだったり、とにかく幅が広い。
また著者がインド人なので、インド人の目線で見たインドが書かれているのもなかなか新鮮だった。その中でお役所仕事について、大量の書類、無駄な手続きにスタンプ、長蛇の列、文章からはインド人著者もうんざりしているのがくっきり伝わってきた。
1つの話題に対しだいたい5~6ページと完結に書かれていて分かりやすく、写真もたくさん使用されていて、絵本を読む感覚で読めるのでおすすめだ。
この本のタイトルである牛達についての記述を一部内容を引用したい。インドの牛達は交通量の多い場所にたむろする傾向がある。確かに私の経験上でも住宅街で牛を見かけるのは稀である。では、道の真ん中で何をしているのか?という疑問について著者はこう述べる。
最近の調査によると、インドの牛は交通量の多い道路を好んでうろつくということが分かった。バス、トラック、オートリキシャやトラクターなどから、もうもうと吐き出される排気ガスが、どうやらまとわりつくハエを追い払うのに効果があるようなのだ。同時に牛達は排気ガスを吸って、気分はハイになるといったダブル効果もある。
なんともおっかなびっくりな理由であった。4コマ漫画か!と思わずツッコミをいれたくなる。さすが、インドの牛達である。
↑バラナシにてゴミ箱をあさる牛
インドに訪れた事のない人は、そもそも牛が野良で生息している事を不可思議に思うだろう。しかし、インドで生活をしていると、いい意味でも悪い意味でもインドの不可思議には慣れる。道に牛がいても驚かなくなり、道端の蟻を見る目で牛を見る。その違いは大きいのか小さいのかだけであり、どちらも私には危害を与えないので何も思わない。
インドでは、日本人の感覚を薄れさせて『あぁ、そういうもんなのね。おーけー。おーけー。』という風に思考が溶ける。色々考えたりするのがもはや億劫。だが、今回この本を読んで溶けていた思考が元に戻り、『やっぱりインドって変だよなぁ』と改めて実感する。
ここまでおすすめしておき申し訳ないのだが、残念ながらこの良書は日本では出版されていない。(おすすめするのであれば入手が簡単な本をおすすめするのが常識だ、と思ったのは私だけではないはず。)だが、インドに訪れた際は是非とも購入して欲しい。ここまで多ジャンルにインドの事を書いている本は珍しい。
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